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「中性的な顔」は「立体的な顔」だった

「中性的な雰囲気、あれはキレイな顔立ちの子の特権だよ」。
立ち寄ったカフェで誰かがそんなことを言っていた。

 

よく中性的と言われる僕にはこんなエピソードがある。
有権者となって初めての選挙でのことだ。
受付で入場券を渡したのに、なぜか投票用紙を渡してくれない男性職員。
見つめ合うこと数秒。やがておずおずと問いかけてきた。
「……女性ですか?」
まさかだった。
年齢確認ならともかく、性別の確認をされるとは。
しかもこんなところで。
ムッとしながらも「男です」と返すと、ようやく用紙が差し出された。
もし「キレイな顔立ち」であることが「中性的」の十分条件なら、僕は中性的になり得ないはずなのだが。

 

MtF(男性のトランスジェンダー当事者)の友人がいる。
彼は178センチという長身の持ち主。
骨格も決して華奢な方ではなく、デコルテの開いた服を着れば男性らしいラインが見える。
普段は女装で生活する彼にとって、この体格は大きなハンディキャップになっている。
それでも「着たいものを着たいから」と、ゆったりしたカーディガンを羽織ってうまく体格をカバーするのだ。

彼はこうも語る。
「せっかくオシャレしても、服に合わせてメイクもしないとダサく見えちゃう気がする」。
着たいものを着たら、今度はそれに合わせて好きなメイクを楽しむのが彼の流儀だ。
もちろんファッション同様に、メイクにも工夫を欠かさない。
探求の末、彼が見出したポイントは「立体感」。
まず、ベースメイクを素肌よりもワントーン明るく見えるように仕上げる。
ハイライトとシャドウを際立たせていき、唇に赤みを足せば完成だ。
このようにコントラストをはっきり描いていくことで、相手に与える印象を女性的に傾けることができるらしい。
心理学者のリチャード・ラッセル氏が発表した論文「顔のコントラストにおける性差と化粧による強調(『Perception』2009年号掲載)」を参考にしたメイクだそうだ。

本来の彼はコントラストの薄い顔立ちである。
彫りは浅いし、色白と言うほどでもない。
唇の血色もどちらかといえば暗め。
それがこのメイクでかなりフェミニンな雰囲気に近づいた。
最近ではSNS上で出会い目的の男性からナンパされることもあるらしい。
もはや、喋らなければ背の高い女性にしか見えないところまで来ている。

 

彼の話を聞いて、そして彼のメイクを見て納得した。
僕もそういうことなのだ。
カフェで聞こえてきた声の主に教えてあげたい。

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