注目のメニュー
やはりどう考えてもメンズスイーツはスイーツらしくない

平日、昼下がりのパンケーキカフェ。
若い女性客で賑わう店内に一人、場違いなお客がいた。
ダークブラウンのスーツに黒縁眼鏡をかけた身なりのいい老紳士。
窓越しにパンケーキを焼いているところが見られる、このカフェ唯一の特等席に座っていた。

近年「スイーツ男子」という言葉が生まれ、カフェやコンビニなどでも男性向けのスイーツを見かけるようになった。
ファミリーマートではスイーツ好きの男性に向けて「俺のスイーツ」シリーズを展開している。
ただ、僕はこのシリーズを買いたいと思ったことはない。

 

もう2年以上前のことだ。
大学のゼミの先生が授業後、「『男のパフェ』が食べられるカフェがある」と案内してくれた。
メニューを開くと、そこにはボリューム重視かつ甘さひかえめのチョコレートパフェ。
結局、先生も僕もそのパフェを頼むことはなかった。

店に着く前から何となく想像はついていた。
男性向けを謳ったスイーツはチョコレートばかりでバリエーションに乏しいことが多いからだ。
パッケージに華やかさがないのはこの際置いておくとして、二言目には決まって「甘さひかえめ」「ボリューム満点」などと続くのもどうだろう。
スイーツと謳いながら、ちっともスイーツらしくないではないか。
世の男性が皆、ビターでボリューミーなチョコスイーツを所望しているなんてことはないはずなのに。

「俺のスイーツ」シリーズも、まさにその典型だ。
同シリーズの購買比率は男性7割、女性3割。
ファミリーマートが扱う通常のチルドデザート商品と比べると、同シリーズを購入する男性の比率は1割近く上回っているとのことだが、そもそもコンビニ利用者の比率は男性の方が多い。
そう考えると、ターゲットの男性よりもむしろ女性に人気が出たとさえ言える。
僕のようにスイーツらしくないスイーツを押しつけられているような感覚を嘆く男性がいるように、「せっかく食べるなら量を食べたいし、スイーツだからって甘いモノばかりじゃイヤ!」と考える女性がたくさんいたのかもしれない。

 

ようやく僕の目の前にパンケーキが運ばれてきた。
オムレツとスパムが乗ったパンケーキ。
昼食をまだとっていなかった僕は甘いパンケーキではなく、オムレツとスパムが乗ったパンケーキをオーダーしていた。

老紳士はまだ食事中。
もう半分以上は彼の胃の中に入っているようだが、チョコレートソース、生クリームがトッピングされているのが見えた。
パンケーキから皿の上にこぼれている赤と黒の小さな粒は、クランベリーとブラックベリーだろうか。
僕はメニューを手繰り寄せてそのパンケーキを探した。
「デビルズ・パンケーキ」。
これだ。
女性客に人気の、この店の定番メニューらしい。
今さらながら「こっちを頼んでもよかったかな」なんて心移りしてしまう。
かといって僕の胃には追加でオーダーする余裕などない。
仕方なく目の前のパンケーキを一口食べては、チラチラと老紳士の皿に視線を移す。
そのたびに味を想像して我慢する。

老紳士はそれから15分ほどかけて残りのデビルズ・パンケーキを平らげると、レジで「また来ます」と告げて出て行った。

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